最終更新日 2017.02.19

■航空ブロマイド
 蒐集できたハガキ判ブロマイドには、幾つかのシリーズがあったようです。
その中で、筆者は少なくとも次の5つの大きなシリーズがあったと知りえています。


SEIKAIDO  宛名面に「SEIKAIDO」とあり、発行所が窺えるシリーズです。
調べたところ日本橋に「青海堂」というに老舗の絵葉書発行所があるので、ここが発行所と推測されます。
 写真面に番号が付与されており、発行はこの番号順に行われたと考えられます。
その写真面には、(日本)などの国名標記があるものとないものがあります。想像ですが、発行が一度のみとは考えにくく、当初は国名がないまたは()内にはなかったが、増刷によって途中から入れるようになったのでしょう。その国名も、ユンカースK37やカーチスP6では「日本」となっていることから、原産国ではなく撮影国になっているようです。
 また、宛名面に数種類があり、数回の発行を思わせます。写真は左から古い順と考えられますが、筆者が有する中では1枚だけ、右端のものがあります。
タイプ1 タイプ2
タイプ3 タイプ4
 
発行所不明@
(栗本?)
 宛名面に発行所に関する情報がないシリーズですが、写真面の標記から次の3点において、SEIKAIDOシリーズとの識別ができます。
  • 宛名面に発行元を示す標記はない
  • 写真面の番号が、()内表記になっている
  • 写真面の皇紀式の機種名が、SEIKAIDOシリーズの漢字表記(例 九一式)に対して、本シリーズでは91式とアラビア数字表記になっている
 加えて、途中から、写真面に複製厳禁の文字と三角形(▽)に鳥(孔雀?)とKを入れたマークが入るようになったと思われます。 筆者はこのKは商標ではないかと想像し、Kのイニシャルを持つ発行元を調べたところ、国立国会図書館デジタルコレクションで『絵画絵葉書類品付属品美術印刷製品仕入大鑑』(大正14年10月発行)に、当時の絵葉書の印刷元や発行元の一覧を見つけました。その中に、栗本本店(大阪堺筋・兄)と栗本信次郎商店(東京神田・弟)という兄弟による会社があり、その商標が三角形(△)にKで、後者のKの印象はかなり近い印象を受けました。
 筆者はここが発行元ではないかと推測していますが、確証を得るべく継続調査中です。
 また、蛇足ですが、前述の青海堂は、同書には「永瀬青海堂」として掲載されています。
無地 オリエント
 
発行所不明A  写真は無標記で、宛名面でも発行所や(絵柄毎の)識別番号の標記が一切ありませんが、宛名面は絵葉書仕様で、かつ次の4種類の印画紙情報を見ることができます。
  • POST CARD(KODAK AZO印画紙)
  • POST CARD(Oriental Photo Paper)
  • POST CARD(NIHON SHASHIN Photo Paper)
  • POST CARD(日写・アサヒ印画紙)
 1番目は、切手貼位置にある「■AZO」から、のKODAKの印画紙と分かります。海外のインターネットサイトによれば、「◆AZO」「▼AZO」「 AZO」「■AZO」で製造年代が特定できるとあり、「■AZO」は1926〜1940 年とのこと。年代的には整合しており、国産品が少なかった初期の発行品と推測できます。
 2番目のOriental Photo Paperは、大正8年9月創立のオリエンタル写真工業株式会社の製品「オリエント印画紙」でしょう。前述シリーズの宛名面にもあります。同社は航空関係として営業しており、写真用印画紙、乾板、フィルム等の品目が『昭和十五年 航空年鑑』にも掲載されています。3、4番目は日本写真工業(昭和3年11月創立)の製品「アサヒ印画紙」だろうと推測できます。

 なお、前述したように、本シリーズの写真面には個々の識別番号がありませんが、宛名面に判子や鉛筆書きによる番号が時折見受けられます。
当初は蒐集者が入れたかとも思っていましたが、同じ絵柄で異なるブロマイドに同じ番号が付与されているのを数例発見できてました。とすると、「発行元(製造元)または販売店における品物の識別番号」と見る方が自然でしょう。この手の識別子がないと、品切れ等の際に補充すべき品を指定できないからと思われるからです。
また、逆に異なるブロマイドで番号重複している例も知りえています。それについては、時代を経てそれが売れなくなれば、他に挿げ変えたのではないか想像しています。

 タイプ4は右読みで「郵便はがき」とあります。それまでの「郵便はかき」が「郵便はがき」に改められたのは、昭和8(1933)年2月とされており、それ以降の焼付け・発行と分かります。
タイプ1 タイプ2
タイプ3 タイプ4
 
発行所不明B
(無標記・無地)
 写真・宛名の両面ともに無標記で、宛名面も無地です。つまり、絵葉書ではないと推測されます。
加えて、ちゃんと取材・撮影しているようで、凝った写真になっているに感じられ、高級路線を志向したシリーズのように思えます。 左はその一例で、この愛国3「小布施号」は構図といい、撮影者の意図があっただろうことを感じます。
 
発行所不明C
(白帯)
 写真面の下側が右側に白帯があるシリーズです。帯の中には標記がありますが、無標記なものもあるようです。
 裏面は、無地です。